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独身20代男の適当生活ブログ


by nekoneko354
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「マサキの冒険1」

「マサキの冒険1」
プー
車笛の音が消え、電車はゆっくりと、だがだんだんと加速していき、暗闇の中へ消えていった。
ただ、電車を見つめて闇の中へ去っていくのを見ている男がいた。
男の名前はマサキ。キャバクラ大好き、おっぱい大好き、日課のオナニーは欠かさない、
21歳の人生お先真っ暗の21歳だ。
マサキは物思いにふけていた。先ほどまでは友達と遊び、楽しいひと時を過ごしていたが、
それもあっという間に過ぎてしまった。マサキはタバコに火をつけ、肺の中にたっぷりと煙を入れると
思いっきり吐き出した。少しむせる。いつごろだろうか、タバコを吸い始めたのは。

マサキは子供の頃から少し変わった子供だった。人とは違う意見を持っていて、それを理由に友達から
煙たがられた事もあった。だが、マサキは変わった。高校生の頃、バイトの先輩にタバコを吸い始め、

「マジ先輩これうまいっすよ、パネエwwwww」

とか言ってた。多分クズ。
そのころからマサキは人が変わったかのように、人の意見に合わせ、つまらない人間へと成り果てていた。

マサキはタバコを吸いながら自宅へ向かった。少し肌寒いのでジャンバーのファスナーを少しあげた。
心なしか暖かく感じた。マサキはその暖かさがとても心にしみ、冬の寒さの厳しさに少し怒りを感じた。
そんなことを思いながら、歩いていたらいつの間にか自宅の玄関の前についていた。築10年の賃貸マンションだ。
1Kの部屋しかなく、人が三人もはいれば息苦しく感じるこの部屋も、マサキにとっては立派な城だと思っている。
たとえタバコの火で床を焦がそうが、ゴミを出さずに部屋が異臭で包まれて、それが原因でくしゃみが止まらなかろうが、
マサキにとっては自分の給料で借りた初めての部屋だった。思い入れも深い。悲しいことも楽しいこともこの一年間ずっと
この部屋で過ごしてきた。そんな部屋だ。くさいけど。
そんなことを考えていたら玄関の前でずっと立っている事に気がついた。マサキは少し自分に笑い、玄関の鍵を開け、扉を開いた。

そこにはマサキがいつも見ている光景が広がっていなかった。

玄関の先にはいつものように新聞紙で埋まっている、汚い光景が広がらず、ただっぴろい草原が広がっていた。
マサキは一度玄関を閉めた。何かの間違いだ、最近疲れてるから。そう思いながらもう一度玄関を開けた。
やはりそこには果てが見えない草原が広がり、気がつかなかったが野良犬だろうか、遠吠えが聞こえた。
マサキは迷った。このまま草原に進むか、それとも友達に電話し今日は部屋がおかしいから、もしかしたら自分もおかしいから
とめてくれないかと。だが、マサキはある昔わかれてから10年くらいあっていない友達の言葉を思い出した。

「お前はすぐ迷うよな。迷うぐらいなら進めよ。進まなきゃ変わらないぜ」

それもそうだ、当たり前の事を言われた。当時のマサキにとってはその言葉は心に響き、けれども納得はしたくない言葉だった。
だが、今のマサキにとってはその言葉は魅力的に感じていた。社会人になってから停滞していると感じていたマサキにとっては
その言葉はマサキの背中を押すには充分すぎたのだ。

マサキは草原に一歩踏み入れた。ジーンズの中に入った草が少しうっとおしい。マサキはもう一歩足を踏み入れた。完全に体は
玄関の中に入り、マサキは両足で果ての見えない草原の大地に立っていた。また遠吠えが聞こえる。怖くなったマサキは引き返そうとした。
だがそこには玄関はなかった。そこにはただ草原が、風に揺れている草が広がるだけだった。

続く
by nekoneko354 | 2008-11-24 04:53 | 変な小説みたいの